XMASS実験で、「Super-WIMP」がダークマター候補から外れる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

岐阜県飛騨市の地下検出器「XMASS-I」による高感度探索で、ダークマターの有力候補の1つだった「Super-WIMP」の可能性が消去された。ダークマターの性質解明に向けた大きな一歩となる成果だ。


【2014年9月29日 カブリIPMU

「ダークマター」は他の天体に及ぼす重力を通してしか存在を知ることのできない謎の物質で、その性質は理論研究によりさまざまに予測されている。その候補の1つが、ボゾン粒子のSuper-WIMP(スーパーウィンプ:極めて弱く相互作用する質量粒子) だ。この粒子が存在するとすれば、銀河の運動や宇宙背景放射の観測から知られているダークマターの量をうまく説明できるとして、有力候補とされていた。

カブリIPMUの鈴木洋一郎さんらのXMASS実験グループでは、岐阜県飛騨市の地下1000mに設置された「XMASS-I」検出器を用いてSuper-WIMPの兆候をつかまえようとした。この粒子は地球にも降り注ぎ、まれに物質(検出器内の原子)に吸収されてその静止質量と等しい運動エネルギーをもつ電子を検出器内に放出するとされる。その信号をとらえようというのだ。

XMASS-I検出器
XMASS-I検出器。2010年2月25日、建設時のようす(提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設)

165.9日分の観測データから、4万〜12万eVの質量(電子の質量の10分の1から5分の1程度に相当)を持つ粒子について高感度で探索を行った。だが粒子による信号は見つからず、この質量範囲のSuper-WIMPが宇宙のダークマターであるというシナリオは正しくないことがはっきりした。

鈴木さんは「さまざまな種類のダークマターを偏見なく探索する価値が上昇してきています。本研究は軽いダークマターの探索という新たな視点を持ち、かつ世界初、世界一の感度での研究結果です。今後ともXMASS実験の動向に注目いただければ幸いです」とコメントしている。