穏やかな銀河の中心に巨大質量ブラックホールの連星

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【2014年4月25日 ヨーロッパ宇宙機関

うみへび座方向にある銀河の中心部で、普段は静かな超巨大質量ブラックホールの一時的な活動を示すX線放射がとらえられた。観測からこのブラックホールはお互いの周囲を回る連星とみられ、かつて衝突合体した2つの銀河の中心にそれぞれ存在したものと考えられる。


銀河中心のブラックホール連星

銀河中心のブラックホール連星のイメージ図。ブラックホールへの物質流入を、もう一方(手前)が妨げることで、X線放射の変動が生じると予測されていた。クリックで拡大(提供:ESA - C. Carreau)

大規模な銀河の多くはその中心に巨大質量ブラックホールが存在すると考えられているが、その活動は活発なものと静穏なものとがある。活発なものは周囲のガス雲を引き裂き、加熱されたガスが放射するX線が常に観測できる。一方、活動の静かなブラックホールでは、恒星を引き裂いてのみこむ瞬間をとらえない限り、その活動を目にすることはできない。

「潮汐破壊現象」と呼ばれるこのような瞬間の一時的なX線フレアをたまたまとらえたのが、ヨーロッパのX線観測衛星「XMMニュートン」だ。2010年6月、銀河SDSS J120136.02+300305.5(以下J120136)で起こったこの現象が観測データから見つかり、数日後から追跡観測が始まった。X線はだんだん弱くなり、発見から1ヶ月ほど経ったころ観測されなくなったかと思うとまた強くなり、ゆっくりと消えていった。

この不思議な変動は、ブラックホールが連星である場合に見られると予測されていたものと一致していた。中国・北京大学のFukun Liuさんの理論によれば、ブラックホールへの物質の流入をもう一方のブラックホールの重力が阻むことで、一時的にX線放射が弱くなるという。

銀河中心部のブラックホールの連星候補はこれまで数例しか見つかっておらず、今回のような活動的でない銀河ではこれが初めての発見となる。観測から、J120136のブラックホール連星は以下の2通りの構成が考えられている。

  • 一方は太陽の1000万倍の質量、もう一方は50万倍の質量のブラックホールで、楕円軌道の連星
  • 重い方は太陽の100万倍の質量で、円軌道の連星

いずれにせよかなり接近した連星で、お互いに0.6ミリパーセク、およそ190億kmしか離れていない。これは、太陽系中心部から探査機「ボイジャー1号」までの現時点の距離程度だ。2つのブラックホールは200万年以内に合体し、さらに巨大な1つのブラックホールができあがるだろう。

銀河中心の連星ブラックホールは、それぞれを中心に抱いていた2つの銀河が衝突合体した名残りであり、合体の証拠となる。同じような現象の観測例を多数積み重ねることで、銀河の合体や進化の歴史がさらにわかってくると期待される。

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