「あかつき」金星再挑戦は2015年11月 進むトラブル検証

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【2011年7月4日 JAXA相模原市立博物館

金星探査機「あかつき」の検証報告が行われ、軌道制御エンジンのノズルが破損している可能性が高いこと等がわかった。今後エンジンの代替使用も視野に入れながら引き続き検証を行い、2015年11月の金星周回軌道入り再挑戦を目指す。24日の講演会情報も。


2010年5月に打ち上げられ、同年12月の金星周回軌道入りに失敗した探査機「あかつき」について、軌道投入に使用されたエンジンのトラブル詳細分析の結果と、それをふまえた今後の再挑戦計画が発表された。

軌道投入時トラブルの詳細

「あかつき」軌道制御エンジンの簡略図

「あかつき」軌道制御エンジンの簡略図。ヘリウムガスにより燃料と酸化剤を押し出し、燃焼室で混合爆発させて推進力を得るしくみ。クリックで拡大(提供:JAXA)

(軌道制御エンジンの燃焼器)

画像1枚目の下部にあたる、軌道制御エンジンの燃焼器。ノズル部が破損した可能性が高い。クリックで詳細拡大(2010年12月のJAXA発表資料より)

軌道投入トラブルの際起こった事象として、直後の2010年12月末までに解明していたのは以下の通りだ。

  1. 軌道制御エンジン内部(画像1枚目)で、ヘリウムタンクと燃料タンクとの間の逆流防止弁が(A)何らかの原因で詰まった
  2. 流量不足となった燃料と酸化剤の混合比が想定外のものになった
  3. 異常燃焼が起こったことで、(B)何らかの過程により機体の姿勢が撹乱された
  4. 姿勢の乱れを察知した「あかつき」は機体保護のため自動的に噴射を停止。結果、噴射時間の不足により金星周回軌道に乗れず

今回、上記(A)(B)の部分の詳細について以下の可能性が高いことが判明した。

  1. 酸化剤が逆止弁を透過して燃料タンク側の逆止弁付近まで入りこみ、燃料との化学反応により生成された塩(硝酸アンモニウム)が詰まった
  2. 異常燃焼による燃焼器のノズル(噴出口)の破損(画像2枚目)

Aについて、燃料や酸化剤が弁の隙間からわずかに漏れることについては打ち上げ前に検証済だったが、弁の材料を透過することは考慮されておらず、特に酸化剤の透過量が多いことが今回の検証試験でわかった。このような事態の可能性は、開発中または今後開発される衛星について新たな対策事項として加わることとなる。

現在の軌道制御エンジンの状況は、問題の逆止弁はふさがっているものの、微小なガス供給量は維持されていると考えられる。

金星との再会計画

2015年11月の東の空

2015年11月の4時半ごろ、東京で見る明けの明星をステラナビゲータでシミュレーション(6月30日の発表資料図通り22日とした)。レグルスとスピカの間に木星・火星とともに集う美しい光景が見られそうだ。クリックで詳細拡大

さまざまな検証の結果、気になる金星周回軌道入り再挑戦についても新たな計画が発表されている。

まず、今年9月ごろに軌道制御エンジンをテスト噴射する。もし使用できない状態と判断されれば、その後の軌道制御は姿勢制御用エンジン(RCS)に頼ることになる。

2011年11月または2012年6月ごろに軌道修正のための噴射を行い、2015年11月に金星に接近して周回軌道入りに再挑戦する。RCS使用の場合はパワーが弱いため、本来の観測軌道と異なる軌道に入る。

「あかつき」を護るため、ノズル破損を広げないようエンジン着火時の衝撃を和らげる手法や、逆止弁がふさがった状態でも燃料と酸化剤を正常な混合比で燃焼させる手法なども地上試験で検討していくことになる。

金星の公転軌道に近い太陽周回軌道を航行中の「あかつき」は、現在地球から見て太陽の向こう側を通過したところだ。通信状態などは良好で、6月末から7月初めには「あかつき」から届く電波から太陽風の性質を探る珍しい観測も行われている。


講演会「あかつき飛行中:金星との再会を目指して」

着々と進む「あかつき」再挑戦への準備について、プロジェクトチームの佐藤毅彦氏から直接現況を聞ける講演会が神奈川・相模原市で開催される。

■ イベント名:
天文の日講演会「あかつき飛行中:金星との再会を目指して」
■ 講師:
佐藤毅彦氏(JAXA宇宙科学研究所教授)
■ 日時:
2011年7月24日(日)
14:00〜16:00
■ 場所:
相模原市立博物館 大会議室(博物館地下1階)
■ 内容:
太陽を200日ほどかけて回る軌道に入った金星探査機「あかつき」は、今後再び金星に接近して再会を目指しています。「あかつき」の軌跡と現状、再チャレンジへの抱負をプロジェクトメンバーが直接語ります
■ 参加方法:
事前申し込み不要。定員先着200名。無料

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