火星探査機MRO、高解像度カメラの異常が解決

【2007年8月28日 NASA Mission News

NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)の運用チームは、懸念されていた高解像度カメラHiRISEの異常が解決したことを発表した。HiRISEが撮影して地球に送られてきた画像はすでに3,000枚以上。この調子で、数年間は観測を続けられると期待されている。


(マリネリス峡谷の崖の地層)

マリネリス峡谷の中央部、削られた崖に現れた地層。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

(南極の極冠に見られる「指紋状地形」)

南極の極冠に見られる「指紋状地形」。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

MROは2005年8月12日に打ち上げられ、2006年3月10日に火星に到着、同年11月から本格的な観測を始めていた。HiRISEは、火星表面を数十センチメートルという高い解像度で撮影することができるカメラで、MRO最大の売り物。そのHiRISEに異常が見つかり、数か月間にわたって関係者の不安の種となっていた。

HiRISEは14個の光検出器からなるが、そのうち2個でノイズが目立つようになり、5個で軽微な異常が現れた。今年2月の時点では、異常は悪化する一方だった。

開発と設計を担当した技術チームは、ただちに原因究明にとりかかり、地上の模型で異常を再現することに成功した。その結果、原因となっている電子機器が特定され、撮影前に温めておけば画質に影響を与えないことがわかった。検出器のノイズも、ここ5か月間で悪化は見られず、関係者は胸をなで下ろしている。

「装置が安定していて、問題の原因もわかっている今、私たちはHiRISEが今後何年にもわたって質の高いデータを届けてくれると期待しています」とHiRISEの主任研究員で米国アリゾナ大学の Alfred McEwen氏は語っている。

画像は、HiRISEが撮影し最近公開された写真だ。1枚目に写っているのはマリネリス峡谷の一部。水や風の作用で削り取られた崖のクローズアップで、地層の重なりが段状に現れている。

2枚目は、南極の極冠に見られる「指紋状地形」と呼ばれる模様だ。ここは二酸化炭素の氷、つまりドライアイスに覆われていて、ドライアイスが日光で蒸発することで地形が形成されると考えられる。しかし模様はあまりに直線的で、蒸発の作用だけで作られたとは考えられない。砂丘がドライアイスで薄くコーティングされたか、ドライアイスが風で細かく砕かれて砂丘のようなものを形成したらしい。