スピッツァーとチャンドラ、4つの銀河による大合併を撮影

【2007年8月21日 Chandra Photo Album

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーやX線天文衛星チャンドラなどの望遠鏡が、4つの銀河が衝突しつつある場面をとらえた。大合併により宇宙最大級の銀河が誕生しようとしている。


(銀河団CL 0958+4702の画像)

銀河の合体現場。スピッツァーの赤外線画像(赤く着色)、地上望遠鏡の可視光画像(緑)、チャンドラのX線画像(青)を重ね合わせた疑似色画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/K. Rines (Harvard-Smithsonian CfA))

(銀河の合体現場の想像図)

銀河の合体を間近で見たときの想像図。重力ではじき出されてしまった恒星のまわりを惑星が回っていたら、地上ではこのような光景が広がっているかもしれない(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (SSC))

銀河の衝突は、おおぐま座の方向約50億光年の距離にある銀河団(解説参照)「CL 0958+4702」の中で起きている。われわれの天の川銀河と同程度の銀河が3つ、そして天の川銀河の3倍の質量を持つ銀河が1つ、あわせて4つの大銀河がまさに衝突、そして合体へと向かおうとしている。

この現場を発見したのはスピッツァーだが、4つの銀河が確かに接近していることを確かめるために地上の望遠鏡が、そしてガスを観測して銀河団全体の性質を調べるためにチャンドラが使われた。それぞれが赤外線、可視光、X線で撮影したデータを重ね合わせ、この画像が得られた。

大型の銀河は、銀河どうしの合体で形成されたと考えられている。1つの大きな銀河に小さな銀河がいくつも飲み込まれる「吸収合併」は、観測例が多い。また、2つの大きな銀河による「対等合併」も見つかっている。しかし、複数の大銀河が集まる「大合併」が見つかるのは、異例のことだ。

「私たちが知っている銀河合体のほとんどは、小型車どうしの衝突のようなものです。ここ(CL 0958+4702)では、言ってみれば4台のダンプカーが一斉に激突して、積んでいた砂をそこらじゅうにまき散らしています」と語るのは、観測結果を論文にまとめた研究チームのリーダーである米国ハーバード・スミソニアン天体物理センターのKenneth Rines氏。

4つの銀河のまわりには、ほこりが舞い上がったような構造が認められる。Rines氏らの分析によれば、これは衝突の過程で銀河からはじき出された恒星だ。このうち半分はいつまでも銀河間空間を漂うことになるが、半分は引き戻される。合体が完了すると、質量が天の川銀河の10倍もある「宇宙最大級の銀河」が完成するとRines氏は言う。

銀河団

銀河群より大規模な恒星の集団を銀河団と呼ぶ。直径数千万光年の空間に数百〜数千個オーダーの銀河が集まっている。銀河系にもっとも近い銀河団は「おとめ座銀河団」で、1000個以上の銀河が集まっている。私たちの局部銀河群を含めた局部超銀河団の中心に位置し、局部銀河群は「おとめ座銀河団」方向へ引きつけられていることも観測されている。(「最新デジタル宇宙大百科」より)

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