変光星「ミラ」と新星「さそり座V1280」がたいへん明るい

【2007年2月19日 VSOLJニュース(168)】

(著者:山岡均さん(九大理))

くじら座ο(オミクロン)というバイエル名を持つ変光星ミラは、年老いた星(赤色巨星)が膨らんだり縮んだりすることで明るさを変える脈動変光星の代表例で、最初に発見された変光星としても有名です。周期は330日あまり、変光範囲は2.0等〜10.1等とされていますが、極大等級はそのたびに異なっており、ここのところ極大でも3等前後までしか明るくなりませんでした。

ところが、今回の増光期には、2.0等を超え、1.9等との報告もあるほどです。歴史的には、1779年に1.2等という特に明るい観測がありますが、それ以降1.8等より明るくなったことはありません。ミラは現在、夕方の西の空高く、見やすい位置にありますから、今回のたいへん明るい極大をぜひご自分の眼で確認してください。

一方、VSOLJニュース(167)で紹介した、中村さんと櫻井さんが発見されたさそり座の新星には、さそり座V1280という変光星名が付けられました。4日の発見時には9等級だったものが、その後もじわじわと明るくなり、先ほど(アストロアーツ注:17日未明)欧米から来た報告では遂に4.0等よりも明るくなりました。観測報告の抜粋です。

時刻(世界時)眼視等級観測者
2月7.848日8.4等広沢憲治(愛知県)
2月10.844日7.5等金井清高(群馬県)
2月11.794日7.0等金井清高(群馬県)
2月12.790日6.2等金井清高(群馬県)
2月13.246日6.0等J. Ripero(スペイン)
2月14.782日5.4等金井清高(群馬県)
2月15.826日4.7等金井清高(群馬県)
2月15.867日4.2等金井清高(群馬県)
2月16.231日3.8等P. Schmeer(ドイツ)
16.458日3.7等 M. Simonsen(アメリカ)

4等よりも明るくなった新星は、1999年のほ座の新星(ほ座V382、2.5等)および同年のわし座の新星(V1494 Aql、3.6等)以来です。

岡山県井原市の藤井貢(ふじいみつぐ)さん、西はりま天文台の内藤博之(ないとうひろゆき)さんが撮影したスペクトル(2月12日〜14日)では、発見直後よりもずっと高温を思わせるものとなっており、その変化は目をみはるものがあります。今後、どこまで明るくなっていくのか、目が離せません。


「さそり座V1280」と「ミラ」の位置

これらの天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。