太陽系の小惑星帯と同じサイズの「系外小惑星帯」候補を発見

【2007年2月1日 Gemini Observatory

ジェミニ南望遠鏡による観測で、うさぎ座ζ(ゼータ、ζ Lep)からおよそ3天文単位(1天文単位は地球から太陽までの平均距離)の位置にちり粒が集まっていることがわかった。小惑星どうしの衝突によって生成されている可能性がある。3天文単位は、われわれの太陽系では太陽から小惑星帯までの距離に相当するが、このような位置に「系外小惑星帯」が存在する証拠が見つかったのは初めてのことだ。


(小惑星帯の想像図)

小惑星帯の想像図。クリックで拡大(提供:Gemini Observatory)

南米チリにあるジェミニ南望遠鏡が、これまでにないほど「系外小惑星帯」の発見に近づいた。「小惑星帯」が存在する可能性があるのは、われわれから70光年の距離にある恒星、うさぎ座ζ(ゼータ、ζ Lep)である。ちりの存在は以前から指摘されていたが、直接観測するには至っていなかった。

米・フロリダ大学の研究チームは赤外線分光計を利用してζ Lepを観測し、恒星から数天文単位の位置にあるちりが暖められることで放射した赤外線を検出した。これほど恒星に近い位置にあるダストリング(リング状に分布したちり)からの光を、圧倒的に明るい恒星の光から分離することに成功したのは初めてのことだ。2005年に、恒星HD 69830から半径1天文単位以内にあるダストリングの証拠が見つかった例があるが、これは恒星の光に混じった赤外線の性質からちりの温度を割り出し、距離を推定したにすぎない。そのほかの直接確認されたダストリングは、ほとんどが恒星から数十〜数百天文単位離れている。

なお、われわれの太陽系の場合、およそ2.1〜3.3天文単位のあたりに小惑星帯が、30天文単位以上の距離にはエッジワース・カイパーベルトが広がっている。小惑星帯(初めて天体が発見されたのは1801年)に対してエッジワース・カイパーベルト(同1992年)の研究が始まったのはごく最近になってからだが、太陽系以外の恒星の場合、これまでの研究は「エッジワース・カイパーベルト」に関するものばかりで、今回の研究がはじめて「小惑星帯」に迫ったと言っていい。

さて、ちりが多く分布しているのはζ Lepから3天文単位前後の位置だが、6天文単位前後の位置にも少量ながら分布している可能性が高い。いずれにせよダストリングは比較的狭い範囲にまとまっているといえ、その原因として未知の惑星がおよぼす重力的影響も考えられるという。

ζ Lepの年齢は2億3000万歳と推定されている。そうだとすればこのダストリングは、誕生したころの原始惑星系円盤の物質がまとまらずに残ったというよりは、ある程度成長した天体が衝突したことでばらまかれた物質である可能性が高い。そのようなダストリングが、太陽系の小惑星帯と同じような位置にあるということは、ζ Lepにも同じような小惑星帯があると考えるのが自然だ。

ただし、ちりをばらまいたのが無数の小惑星どうしの衝突か、2つの大きな天体の衝突であるかについては、さらなる観測を待つ必要がある。

2005年に恒星HD 69830のダストリングについて発表したNASAジェット推進研究所(JPL)の研究者Charles Beihman氏は、今回の結果を次のように評価した。

「ζ Lepを取り巻く円盤をここまで高精度に観測できたのは実におもしろいことだと思います。今や私たちは、太陽系にある小惑星帯とひじょうによく似た構造がほかの恒星にあるという直接的な証拠を手に入れたと言えるでしょう」