赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」による初画像 ― 生命体の存在に関わる興味深いデータも

【2003年12月20日 JPL News Releases

今年8月25日に打ち上げられたNASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーが捉えた、最初の画像が公開された。スピッツァーの高い能力がうかがえる、興味深い画像とデータが得られている。

(公開されたスピッツァーによる初画像)

公開されたスピッツァーの初画像(左上:散光星雲IC 1396、左下:HH46-IRにある生まれたばかりの星、右上:渦巻き銀河M81、右下:フォーマルハウト付近で発見された、回転する巨大なちりの円盤)(提供:NASA/JPL)

スピッツァー望遠鏡の特徴は、高感度の赤外線観測にある。たとえば、本来ぼんやりとしたガス雲としてしか見えない散光星雲IC 1396の内部を、若い星々の姿を伴ったまばゆいばかりの画像として捉えている。また、おおぐま座の渦巻き銀河M81も、今までに見せることのなかった光輝く様子を見せている。赤い部分は星形成活動が行われているところだ。このように可視光では見ることのできなかった範囲を銀河スケールで捉えることで、星形成などについての研究を進めていくことも可能になる。

また、地球から24光年離れたフォーマルハウト(みなみのうお座の1等星)付近では、回転する巨大なちりの円盤の姿が発見された。この円盤は、惑星系形成後に残された残骸だと考えられる。他の望遠鏡による観測では、円盤の内側の情報はあまり得られていなかった。スピッツァー望遠鏡では、さまざまなちりの温度差を観測して惑星系の進化について情報を得ることもできる。

さらに、生命体の存在に関わる興味深いデータももたらされている。32億光年離れた銀河や原始星HH 46-IRから、水や有機分子の存在が発見されたのだ。32億年前といえば、地球上に最初の生命が誕生するよりはるか以前のことである。なんとも興味をそそられる発見だ。

スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡は、すでに活躍しているハッブル宇宙望遠鏡やガンマ線天文台衛星コンプトン(運用終了)、チャンドラX線望遠鏡に続く、NASAの「宇宙大天文台計画」の最後の宇宙望遠鏡だ。スピッツァーの運用開始で、ガンマ線、X線から、可視光、赤外線までの広い波長域での観測が可能となったわけである。前例のない高精度の赤外線観測を行うことで、可視光では完全に隠されていた遠い宇宙のさまざまな物体の画像が見られるようになるはずだ。大いに活躍しているハッブル宇宙望遠鏡などと同様、科学の最先端で大きな発見を続々と提供してくれることになるだろう。

なお、この望遠鏡は以前はSIRTFと呼ばれていたが、本画像の公開と同時にスピッツァー望遠鏡と名づけられたことが発表された。その名は、20世紀の科学史にもっとも影響を及ぼした人物の一人と言っても過言ではないライマン・スピッツァー・Jr博士の名に由来するものだ。彼は、1946年に初めて宇宙空間に望遠鏡を設置することを提案した科学者である。

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